新型コロナウイルス感染症(COVIDー19)
死亡率について
2022年の時点でもCOVID-19の感染力は高いままとなっています。
ただ、毒性に関しては低下しており、
COVID-19による死亡率は
2020年1.48%、2021年1.06%、2022年1月〜4月0.19%
(岡部ら 日内会誌9: 1731-1739, 2022)、
となってきています。
季節性インフルエンザによる死亡率は0.006〜0.09%と言われているため、
それよりもCOVID-19の方が高いため注意が必要な点は変わりません。
また、COVID-19の感染を繰り返すと
死亡と後遺症リスクは2倍以上、
入院リスクは3倍以上になるため(Bowe B, et al. 2022)
COVID-19となった人は2回目以降の感染を予防することが重要です。
2020〜2021年度はインフルエンザが流行することなく経過しましたが、
2022年4月〜7月に南半球のオーストラリアではインフルエンザAが流行しました。
インフルエンザの流行は南半球から始まり、北半球の冬に流行する、
と言われているため
2022年度は日本でもインフルエンザが流行するのではないか、と心配されています。
現時点では横浜市でインフルエンザの流行はみられていませんが、
これからの年末年始や受験シーズンなど注意が必要です。
コロナ後遺症・Long COVIDについて
また、
COVID-19となった後に様々な症状が続くことがあり、
コロナ後遺症、Long COVIDなどと呼ばれています。
このLong COVIDについて、世界保健機関WHOは
「SARS-CoV-2感染の可能性が高い、または感染が確認された病歴を持ち、
COVID-19発症から3ヶ月後の時点で症状があり、
少なくとも2ヶ月間症状が続き、
他の疾患では説明できないもの」と定義しています。
Long COVIDの症状としては、
倦怠感、息切れ、筋肉痛、関節痛、頭痛、咳、胸の痛み、
嗅覚・味覚の変化、下痢などです。
「倦怠感群」と「呼吸器群」の2つに大きく分かれ、
「呼吸器群」は「倦怠感群」よりもCOVID-19初期の症状が重かった、
と報告されています(Whitaker M, et al. 2021)。
つまり、
COVID-19初期の症状が軽いと「倦怠感群」が多い、
と推定されます。
Long COVIDの重症化を予防するためには、
COVID-19発症から2ヶ月間は無理をしないことが大切なようです。
「疲れることをしない」「だるくなることをしない」など
負荷の量を調節する必要があるようです。
男性よりも女性の方がリスクが高く、
30歳代未満、喫煙、肥満(BMI 30以上)もリスクが高い、
と報告されています(Subramanian A, et al. 2022)。
呼吸リハビリや上咽頭擦過療法、高圧酸素療法、
漢方、鍼灸などが有効、という報告があります。
以上のことから
Long COVIDでは漢方薬などの内服で対症療法を行い、
呼吸リハビリや鍼灸をしていき
COVID-19発症から2ヶ月ほど経過したら運動量を少しずつ増やしていくと
良いようです。
COVID-19の治療薬やワクチンが多数つくられているので、
それぞれの特徴を挙げます。
・抗ウイルス薬:ウイルスの酵素の働きを阻害して、ウイルスが増殖するのを抑える
・中和抗体薬:ウイルスの表面に結合して、人の細胞に侵襲するのを防ぐ
・免疫抑制・調節薬:免疫が過剰に反応すると炎症により臓器障害などが起きてしまうため、炎症を抑える
・コロナワクチン:ウイルスの設計図を人の細胞に入れてウイルスの一部を作らせ、それに対する免疫反応を起こさせることでウイルスの感染を予防する(ファイザー、モデルナ社製)
抗ウイルス薬
①レムデシビル(製品名:べクルリー)
酸素吸入は必要ですが、投与量は少なく、人工呼吸器などは必要ない状態には有効
②モルヌピラビル(製品名:ラゲブリオ)
経口薬であり、1回4カプセルを1日2回、5日間内服
重症化リスクのある軽症〜中等症の患者さんの入院や死亡リスクを30%減少
(Jayk Bernal A, et al. 2022)
妊婦さん、妊娠の可能性のある女性には投与できません
③ニルマトレルビル/リトナビル(製品名:パキロビッドパック)
経口薬であり、ニルマトレルビル2錠・リトナビル1錠、1日2回、5日間内服
重症化リスクのある軽症〜中等症の患者さんの入院や死亡リスクを
88.9%(発症から3日以内に内服開始した場合)減少、
87.8%(発症から5日以内に内服開始した場合)減少
併用禁忌の薬剤が多数あり、注意が必要です
製薬会社のホームページなどで登録しないと処方ができない
④エンシトレルビル(製品名:ゾコーバ)
経口薬であり、1日目は375mg、2〜5日目は125mg、1日1回
重症化リスクのない軽症〜中等症、発症3日以内の方
鼻水または鼻づまり、のどの痛み、咳、熱っぽさ・発熱、けん怠感(疲労感)の症状が24時間ほど短縮
併用禁忌の薬剤が多く、注意が必要です
薬剤の供給量が少ないため、「パキロビッド」の処方実績がある医療機関・薬局のみ取り扱える予定
ワクチン
新型コロナワクチンは、ファイザー社製、モデルナ社製、アストラゼネカ社製、
ノババックス社製などがあります。
①有効性
モデルナ社製ワクチンを2回接種した後、
時間と共に有効性は低下していきます。
感染予防効果は
デルタ株に対して、2回目接種〜3ヶ月は80.2%、9〜12ヶ月は61.3%
オミクロン株に対して、それぞれ44%から5.9%に低下する。
3回目を接種することで効果は上昇し、
感染予防効果は
3回目接種2週間〜2ヶ月後
デルタ株に対して94.2%、オミクロン株に対して72.1%と報告されています
(Tseng HF, et al. 2022)。
オミクロン株(BA.1, BA.2)に対してワクチン3回接種による
発病抑制効果は52%、重症化抑制効果は92.5%
という報告もある(Altarawneh HN, et al. 2022)。
②Long COVIDの抑制・改善効果
オミクロン株が出現する前のデータですが、
感染後6ヶ月の時点でLong COVID症状をもつリスクが低下する、
ことが示されています(Al-Ally Z, et al. 2022)。
③安全性
接種後の死亡例は
100万回接種あたりファイザー社製ワクチンで7.4例、モデルナ社製で2.4例、
と報告されている。
3回目のワクチン接種による副反応は2回目と同程度かより低い傾向にありますが、
腋窩リンパ節腫脹はファイザー社製で5%ほど、モデルナ社製で20%ほど、
2回目は2%ほどであるため3回目接種後の方が高い傾向にあります。
日本では
ファイザー社製2回目接種後の心筋炎3.19件/100万回接種、心膜炎1.28件/100万回接種、
モデルナ社製2回目接種後の心筋炎12.9件/100万回接種、心膜炎2.59件/100万回接種、
と報告されています(厚生労働省 新型コロナワクチンQ & A)。
血栓塞栓症に関して、
ヤンセンファーマ社製ワクチンで4件/100万回接種、
と報告されています(CDC overview of COVID-19 vaccines)。