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てんかん

てんかんとは

意識をなくして、口から泡をふいて、手足をガクガクするけいれんを起こす、

という発作が有名です。

しかし、意識がある発作やけいれんしない発作もあります。

医学的には、

「種々の病因によってもたらされる

慢性の脳疾患であって、

大脳ニューロンの過剰な放電から由来する

反復性の発作(てんかん発作)を主徴とし、それに変異に富んだ臨床ならびに検査所見の表出を伴う」

とWHOでは定義されています(Gastaut H, WHO & ILAE, 1973)。

この文章では難しく、わかりにくいかもしれません。

個人的にかみくだいてみると、以下のようになります。

・原因はさまざま

・長い期間つきあっていく脳の病気

・脳の神経細胞が異常興奮する

・発作を繰り返し、症状や検査結果はさまざま

少しはイメージがつかめたでしょうか。

100〜300人に1人のてんかん患者さんがいると言われ、

まれな病気ではありません。

原因

脳の奇形、外傷、腫瘍、感染症(脳炎や髄膜炎など)、

脳血管障害(脳梗塞や脳出血など)、認知症など

さまざまです。

しかし、原因がよくわからない「特発性」の割合が

60〜70%

と言われています(Forsgren L, 2004)。

遺伝する?

遺伝子異常が原因とされるものは1〜2%と言われていますが、

突然変異のものが多く、家族性に遺伝するものはさらに低いと考えられています。

その少ない遺伝性の疾患の例として、

歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(ミオクローヌス発作、小脳失調や認知機能低下、家族歴など)、

ミトコンドリア病(40歳以下で脳卒中様の症状、てんかん発作、家族歴など)

などがあります。

予後

てんかんの経過としては、

新生児期の重い脳障害によるてんかんは生命予後が不良と言われています。

また、若年発症の歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症などの症状が進行するものも生命予後は不良と言われています。

それ以外の多くのてんかんは発作コントロールが良好であれば生命予後は良好と言われます。

ただ、発作重積や発作による事故などで突然亡くなってしまう危険はあります。

薬はやめられる?

成人では、同じ抗てんかん薬を内服して3年間ほどは発作がなく、

脳波検査でてんかん性異常波が見られない場合、

抗てんかん薬の中止を検討してもよいかもしれません。

ただ、てんかんの種類によっては内服を中止すると

発作が出現する可能性が高いものもあるため、注意が必要です。

また、不規則な生活(睡眠不足)、アルコール摂取、大きな疲労やストレス(進学、引越し、就職、結婚、妊娠・出産など)があると、

再発する危険性が高まります。

発作がなく落ち着いていても今後の状況を考えると

内服中止で発作が起きて、生活に悪影響が出てしまう可能性が高ければ

内服を中止しないほうが良いかもしれません。

つまり、「薬を中止できた」ことが「てんかんが完治した」ことではないため、

内服を中止できた後も生活管理などで発作の危険性を下げていくことが大切です。

症状

さまざまな症状がありますが、発作は数分以内に治まることが多いため、

それ以上の時間にわたり続く場合は救急車を呼んだ方が良いでしょう。

発作時の症状として、

意識を失い、手足をピーンと伸ばしたり、ガクガク曲げたり、

口からは泡をふき、眼は上を向いている、

というような全般性のものがあります。

また、

片方の手足のけいれん、

なんとなく気持ち悪い、さびしい、怖い感じに襲われる、

会話中に突然動きが止まり、ボーッとして、口をピチャピチャさせる、

などの焦点性のものもあります。

いずれにしても、

  • 発作がいつ起きたか
  • 最初にどんな症状が出現し、その次にどうなっていったか
  • 手足や頭部、顔など左右差はあったか
  • 発作後、片麻痺があるか、口から出血はないか、尿失禁はないか

などをメモしておくと良いでしょう。

医療者が発作を目撃することは多くないため、

ご家族の情報が診察を進める上で大切になります。

検査・診断

てんかんを診断するには、脳波検査が重要です。

ただ、検査時は発作時ではないことが多く、検査中に発作が起きるとも限らないため

脳波検査を行なってもてんかん性異常波が見られるとは限りません。

検査は30〜60分ほどかかり、

目を開けたり閉じたり(開閉眼)、

まぶしい光を浴びたり(光刺激)、

大きな呼吸を繰り返したり(過呼吸)、

安静にして寝たり(睡眠)します。

当院では、脳波検査を行えないため、必要時は他院へ紹介いたします。

また、その他の検査として、

血液検査、心電図、CTなど画像検査を検討します。

脳MRIが必要な際は、他院へ紹介いたします。

治療

てんかん発作が初めての場合、

再発の可能性が高くなければ、内服を開始せず経過観察する

(2回目以降の発作で内服開始を検討する)。

再発の可能性が高ければ、内服を開始する。

治療方針は上記の選択となることが多いと思います。

薬剤は、選択肢が多く、症状や状態によって変わります。

最近は、イーケプラ、ビムパット、ラミクタールなどが多くなってきている印象です。

歴史のあるバルプロ酸やカルバマゼピンにも長所、短所があるので、

効果や副作用、価格などを医療者と相談して決めていきましょう。

薬剤が決まれば

多くの場合、内服量を徐々に増やして発作の再発がないか、

副作用やアレルギー反応が起きていないか、

などを確認しながら内服量を調整していきます。

そのため、治療開始の初期は処方日数は数週間など短く、

状態が安定してくれば徐々に処方日数が長くなると思います。

薬剤量が多すぎないか、

内服がしっかりできているか、

などを確認するため、年に複数回は薬剤の血中濃度を血液検査で確認します。

ただ、血中濃度が治療域に達していなくても効果が現れている場合や

血中濃度が治療域よりも少し高いところで発作が抑制されている場合などもあるため、

患者さんに合わせて内服量が調整されていきます。

また、食後に内服するよう指導されると思いますが、

内服できないよりも食前や起床時などでも内服できた方が良いので、

食後にこだわりすぎなくても良いかもしれません。

ライフスタイルに合わせて、内服しやすいタイミングについて医療者と相談していきましょう。

内服を忘れてしまうこともあると思いますが、

その日のうちに思い出したのであれば

1日量に変化が出ないよう時間をずらして内服した方が良いでしょう。

内服治療などの効果が乏しく、発作が持続してしまうことが20〜30%ほどあり、

難治てんかんといわれます。

その場合、外科治療が有効な場合もあるので

専門の医療機関を受診した方が良いでしょう。

日常生活

・発作が起きた日は学校や仕事を休んだ方が良いのか?

 睡眠中や起床時に数十秒ほどの短い、いつものような発作であり、

 意識が悪い、頭痛や吐き気がする、などなければ日常通りの生活が送れるかもしれません。

 ただ、いつもと異なる発作、意識の回復が不十分、頭痛や吐き気などの症状がある、

 薬剤調整中、生活リズムが乱れているなどの場合は

 安静にして経過観察したり、病院を受診したりする必要があるので

 休んだ方が良いでしょう。

・発作が起きた場合、どうする?

 倒れて頭をぶつけないよう支える

 吐いてしまうことがあるため、横向きに寝かせて誤嚥・窒息を防ぐ

  口の中に無理やり手を入れて中のものを出そうとすると、刺激でさらに吐いてしまう危険があるので避ける

 入浴時、浴槽内であれば溺れないよう口と鼻を水面から出し、浴槽の外へ連れ出したり、湯を抜いたりする

  命の危険があるため、シャワー浴にする、湯船に入る場合は周囲の人へ伝えてから入る(周囲の人は時間や物音に注意する)、など注意・対策が必要です。

・車の運転

 日本では条件付きで車の運転が許可されています。

 道路交通法の具体的な運用基準は、こちらをご覧ください。

 運転が可能となるには、発作が2年間起きていない・今後も数年間は発作が起きる危険性が低い場合、が1つの目安となります。

 ただ、大型免許や第2種免許の場合は、抗てんかん薬など内服がない状態で5年間発作がなく、再発のおそれもない、という厳しい基準が設けられています。

・社会資源

 自立支援医療:市区町村の精神保健福祉課に申請すると指定医療機関での通院医療費の自己負担分が1割となる(所得に応じて上限あり)

 精神障害者保健福祉手帳:長い期間にわたり日常生活に支障がある場合、市区町村の精神保健福祉課に申請する。手帳があると通院医療費の公費負担制度や所得税の優遇措置などが利用できます。

 障害年金:初診から1年半を経過し、働けない状態や働くことに制限を受ける状態の時に生活の保障として支給されます。20歳以上であれば、初診日に年金に加入している必要があります(20歳未満で発病した場合は20歳の時点の障害度で判断)。国民年金は都道府県、厚生年金は日本年金機構が受給の決定を行います。今までの詳細な治療歴が必要となります。

 

以上、てんかんについて大まかにまとめました。

てんかんに対する不安や心配が少しでも和らげることができれば幸いです。

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